アスファルト系防水

アスファルト系防水は主に「熱工法」「トーチ工法」「冷工法」「機械固定工法」があり、工法により使用する材料は異なります。
この4種類の工法はそれぞれメリット、デメリットがあり、建物の形状・既存の防水層により選定します。
アスファルト防水の歴史は長く、明治時代の末期より急激に発展し、長い間最前線で使われてきた防水工法なので、最も信頼性の高い防水工法の一つです。
それぞれの、工法の特徴、材料の特徴について説明しします。

熱工法

熱工法とは、溶融した防水工事用アスファルトを溶融釜を使用して溶融し、2~4枚のアスファルトルーフィング類を積層して防水層を作る工法です。アスファルトの溶融温度は220℃~270℃と高温のため、臭気、煙が発生するので、近隣の状況、作業員の火傷、火災などの危険もともないます。また、溶融温度も200℃以下にならないよう管理します。溶融温度が低すぎると接着力が低下し、ルーフィング及び下地の層間で剥離が起きやい為です。逆に温度が高すぎると、アスファルトの物性が低下し、煙や臭気が多く発生します。近年では低煙、低臭気の環境対応型工事用アスファルトが多く広げられていますが、多少なりとも煙、臭気は避けられません。

工法名 長所 短所 備考
熱工法 冷工法との併用が可能。

歴史が長く信頼性が高い。

アスファルトは短時間で硬化するため短時間で防水機能が得られる。

耐久性が高い。

施工時に煙・臭気が発生し、苦情が来る可能性が高い。

アスファルト溶融時に火災発生の危険がある。

技術者の高齢化が進み人数が少ない。

施工技術を要する。

露出仕上げでは防水層に膨れが発生しやすい。

夏では高温作業のため施工が制限される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トーチ工法

トーチ工法とは、改質アスファルトルーフィングの裏面をガスバーナで加熱溶融して下地への接着、ジョイント(シートとシートの重なり部分)の接合を行う防水工法のことをいいます。段取りが容易で施工も改質アスファルトを加熱溶融して張り付けるだけの作業で容易に防水層を作ることができるが、加熱溶融不足による不具合が多く発生していることもあります。ガスバーナーの温度が1000℃以上あるためルーフィングに火を当てればすぐに溶融されると勘違いする可能性があるため職人一人一人が習得できるよう訓練する必要があります。

工法名 長所 短所 備考
トーチ工法 シートの種類、使用量が少なく段取りが容易。

異臭を発生させない(個人差あり)。

常温工法との併用ができる。

目視による品質管理が比較的容易。

既設防水の上から施工できる。

単層仕上げで工期が短縮できる。

熱工法に比べ軽装備化できる。

バーナーの加熱溶融不足による密着不良が発生しやすい。

バーナーの扱いが難しい。

凸下地による損傷。

 

 

 

 

 

 

 

施工品質は職人の技量に強く依存する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷工法

冷工法とは、ゴムアスファルト粘着層を裏面にコーティングした改質アスファルトルーフィングシート複数枚を交互に積層して張り合わせる工法のことをいいます。熱工法は近年市街地の施工が臭気などの公害問題や、火災、火傷の危険性があるため、アスファルト防水工が困難になりました。熱工法の信頼性を確保しつつ、火を使用しない防水工法が望まれ、冷工法が市場に誕生しました。しかし熱工法より、シート相互の水密性の管理が難しい事や気温や下地温度に施工品質が左右されやすいため、施工品質は職人の技量に左右されます。

工法名 長所 短所 備考
冷工法  作業安全性が高い。

熱工法・トーチ工法の併用が可能。

臭気、煙、騒音など周辺環境に影響がほとんどない

CO2の発生が少なく、環境にやさしい

信頼性の高い防水層を構築できる

シート相互の水密性の管理が難しい。

何層も貼り重ね積層していくため、重くなる。

気温や下地温度に施工品質が左右されやすい。

エアーが抜けにくい為、膨れやすい。

 

 

 

施工品質は職人の技量に強く依存する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフィングの特徴

  • アスファルトルーフィングとは合成繊維不織布や有機繊維原紙、ガラス繊維などを原料とした原紙にアスファルトを浸透・被覆して表裏面に鉱物質粉末を付着させたアスファルトと、原紙にアスファルトを浸透・被覆して表面に砂を密着させ裏面に鉱物質粉末を付着させた砂付きルーフィングがあります。
  • 改質アスファルトルーフィングはアスファルトに合成ゴム(エラストマー)や合成樹脂(プラストマー)を適量に添加してアスファルトの低温性や高温性、耐候性を改良した改質アスファルトにより製造されたルーフィングシートのことをいいます。
    代表的な改質材として、合成ゴム系では、熱可塑性ゴムSBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)、合成樹脂系ではAPP(アタクチックポリプロピレン=非結晶ポリプロピレン)が使用されています。